FIGHT CLUBはただのアクション映画じゃない
デヴィッド・フィンチャー監督の映画で主演俳優、ブラッド・ピットの出世作でもあります
名前で先入観を持ってしまいがちなんですが、FIGHTCLUBはただのアクション映画でもないし、バイオレンス映画でも、喧嘩映画でもないです
近いのはSF、経済映画かもしれません
この資本主義社会の中でどう生きるか?と言う大きな問いを投げかけた作品です
モノとは何か?金とはなにか?生きる意味とは何か?
今、戦争もなければ大恐慌もない、それでも毎日が疲弊している現代人が多すぎるのはなぜだという人間の本質、この時代にどう生きるべきかということをプリミティブな殴り、殴られることを使って描かれています
人と人、人と物、人と金、人と現実世界、そんなテーマの話で、図らずもモノについてミニマリストのような考え方も出てきたりして親しみやすいです
終わってみればFIGHTCLUBの話は器にすぎず、物語におけるただの表面に過ぎなかったんだと気付かされます
最初のシーンはしがない色白のサラリーマンの主人公で、彼は北欧家具が大好きでIKEAの家具に信奉してたり、主人公は不眠病で色々な精神治療の会に行って巡り泣くという展開で、何だか序盤からFIGHTCLUB感が無いなと思っていたんですが、途中からブラッドピット演じるタイラーが出てきて一気に世界が変わります
ラストの30分は圧巻です
個人的に好きなシーン
タイラーがフィルムを差し替えているシーン
同居人となったタイラーがバイトで映画館でフィルムを差し替える仕事をしていたのですが、そこでサブリミナル効果でエロい描写を一枚だけ入れるという謎の行動をしていたところです
これは謎でも何でもなく資本主義への小さい反抗なのでしょう
こんな面白いシーンさえも伏線で使うところが、映画が愛される理由なのかなと思いました
シリアスなテーマはコミカルな描写があって生きると思います
タイラーがコンビニの店員を脅し、夢は何だと尋ねるシーン
ある夜、突然タイラーがコンビニを襲撃する計画を立てます。コンビニのバイトに銃を向け、金を出せ!ではなく、お前は大学で何を勉強しているんだ?お前の夢は何だ?と言って脅すシーンがありコンビニのバイトは夢は諦めたけど、昔の夢は獣医だと答えます
タイラーは、お前6週間後に獣医の勉強してないと殺すぞと彼を解放した後、
「あいつは明日の朝一番気持ちいい朝を迎える」
と言ったこのセリフがよかったです
コンビニの店員というのは夢も目的もなくただ金を稼げたらいいという仕事でしかも資本主義の奴隷になっている、自分が本当にやりたいことをしろと言うようなメッセージでした
ねじ曲がった愛がいいです
奥様に石鹸を売りつけるシーン
脂肪と経済はこう回っているんだという皮肉が効いてて面白かったです
タイラーが主人公の手の甲を焼くシーン
タイラーは基本的にやり方がねじ曲がっているんですが、ある日、主人公の手の甲を硝酸で焼きます
そして終わった後に、全てを失って真の自由を得ると言った言葉が刺さりました
何においても失った、もう終わりだと思った後に、得ることができるものだと感じます
我々はライフスタイルの奴隷だ
「我々は消費者だ。ライフスタイルに仕える奴隷。殺人も犯罪も貧困も誰も気にしない。それよりアイドル、テレビ、ダイエット、毛生え薬、インポ薬にガーデニング…。何がガーデニングだ!タイタニックと一緒に海に沈めばいいんだ!」
FIGHT CLUB タイラー・ダーデン
ライフスタイルに仕える奴隷と言う言葉が新しくて、でも的を射ていてすごく刺さりました
自分がミニマリストになったのも何だか仕組みのよくわからないモノと、顔の見えないモノに囲まれて消費で人生を終えるのバカみたいだなぁと思ったのがきっかけです
主人公がブランドボーイと呼ばれているのも皮肉が効いていて面白かったです
スペースモンキーたち
これは言わずもがな
ネーミングも含め存在自体が面白い
東のエデンと言うアニメも大好きで、同じ構造の物語だと思ったんですが、こういうの好きなのかもしれない、、、
あり得ない設定なのに圧倒的なリアリティ
終わってみると、主人公は資本主義の中に思考停止で生きる人間で、タイラーは資本主義を根本から見つめ直す人間、何の為に生きている?と言うことを問いかける人間と言う構造がわかります
この設定、ありえないだろうと思う設定が死ぬほど出てくるんですが、それでも現実的なシーンで、セリフもどこか思い当たる節があるような言葉ばかりでした
色々名前も出てきたのが良かったのかもしれません
主人公は最初に自分の家を爆破され、路頭に迷ったあと、資本主義に生きる現代人において一番身近で大事な”家具”と”服”と言うブランドを失いますが、ここの北欧家具ってところもちょうどいいですよね、、、
資本主義の奴隷っていうとグッチのシャツにエルメスのバッグなどを想起しますが、それだと現実感が薄れてファンタジーになってしまいます
その後にボロボロの家に引っ越すんですが、彼は部屋の火災の保険金でいつでもそこでの生活は終わりに出来るんですが、しようとしません
それほど殴りあいと言うプリミティブな快感に飲み込まれていきます
そして終盤にかけ、ファイトクラブは武装化し、犯罪を犯しながらテロリスト集団になっていくんですが、そのスペースモンキーたちの敵は悪の政府などではなく、クレジットカード会社と言うのがまたリアリティがありました
資本主義の敵はおそらく宇宙人でもないし、悪の組織でもない、確かにクレジットカード会社ですよね笑
もしかしたら資本主義最大の敵は、消費を冷え込ませたコロナウイルスかもしれません
これからの生き方のヒントになる映画だと思います
おわり