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【台湾巨匠傑作選2020】台湾映画 『バナナパラダイス』好きなシーンと考察(ネタバレあり)

【台湾巨匠傑作選2020】台湾映画 バナナパラダイス

アップリンク吉祥寺であった台湾巨匠傑作選2020という映画祭に行ってきました

台湾巨匠傑作選2020が開催されたのは今年5年目だそうです

バナナパラダイスという映画を観てきました

なんというか、感動しました

こう例えたら失礼ですが、フォレストガンプの台湾verだなと思いました

1920年〜70年くらいの中国大陸、台湾の国民党と共産党の戦争、戦後の激動の歴史の中で少し抜けてる純粋な主人公の少年時代から老後までの世渡りを描いて行く、スケールが大きい超大作です

デザインや風景、軍隊、家、生活様式、全てが時代を表していてみんながハングリーで優しい時代だなと思いつつも、軍隊の拷問や近所付き合いの辛さ、仕事探しの難しさ、レイプされそうになったり、家族的な食事風景、寝る部屋は個別ではなく雑魚寝など現実的過ぎるシーンが沢山あります

勉強も英語を勉強しはじめる描写があったり、現代につながっている時代なんだなぁとしみじみ感じました

勉強している中国語もちょくちょく聞き取れて、幹!(畜生!)という言葉とか模名其妙(意味不明)など教科書でしか観たことない言葉が聞けて新鮮でした

印象深いシーン 

仕事を探すときのシーン

主人公と行動を共にしている女性、子供がいるのですが、映画の中で4,5回くらい引越しをします(人生を追いかけている映画なのでそうなります)

新しい土地に行くのは、兄弟の伝手だったり、大学の友達だったりするのですがそれぞれの場所で仕事を探すシーンが印象的です

主人公の少年〜青年時代は現代の資本主義の原型ともいえるヒエラルキーが開始したくらいの年代で、貨幣経済は都会には行き渡っていますが、田舎のバナナ農家や軍隊にはほぼお金はありません

主人公は、軍隊を抜け出して、バナナ農家から、荷物運び、人力車(タクシー運転手のアナログ版)、サラリーマンなど色々な仕事に入っていきます

当時はもちろん、電話も転職サイトなるものは無いので、手紙でやりとりしたり、壁に貼ってある募集チラシを引っ剥がして持って帰ったり、歩いて直接ボスのような人の所に行ったりして仕事を探していました

また、女性は泊まらせてもらう宿などで食事の用意や洗濯、バナナ農家の手伝いなどその家に生活丸々面倒を見てもらい、泊まるだけなら金銭は支払うもののその田舎のバナナ農家で労働するならそこで食事や宿を賄ってもらうというスタイルでした

そして主人公は青年時代を過ぎ、時代が1970~1990年代に入っていくと資本主義どころか、パソコンすら会社に置いてあるという時代に入っていきます

同時に主人公も勉強して資格を取り、いわゆるブルーカラーの仕事からホワイトカラーの仕事に就きます

その頃には履歴書を書いたりなど、現代的な描写もあり面白かったです

人力車の仕事で太った富裕層を運ぶシーン

主人公が人力車の仕事をするとき、スーツをキメた太った男とその子供を運ぶシーンがあり面白かったです

ハングリーに日銭を稼いで生きる人たちだけでなく、戦争や資本主義で潤った商人のような人も沢山生まれたんだなぁと言うシーンで、格差社会と富裕層の肥満を皮肉したいいシーンでした

勝手に宿の隣に自分で家を建てちゃうハングリーなシーン

主人公は人生の中で宿代の滞納に追われ、自分の家を自力で建て始めます

雨の日に梯子に登って小屋の屋根を固定する為にガンガン釘を打つシーンが印象的でした

その掘立小屋を建てたあと、近所の人に勝手に家を立てるな!と論争になるんですが、すごいリアルで面白いです

中国、台湾の家ってすごい窮屈な場所に所狭しと詰まっているイメージがあるんですが、あんな感じでどんどん隙間に作られていったんだな〜と笑えるシーンです

そして主人公は不法に家を作ったので壊されないように、鉄条網を家にグルグル巻き付けます

勝手に作った家を壊す側もすごい根性ですが、、、笑

ハングリーで好きなシーンです

兄弟の拷問によるトラウマのシーン

主人公の兄は軍隊の中で共産党のスパイだと容疑をかけられた時の拷問の記憶がトラウマになり、寝ても悪夢として思い出し夜に泣き叫ぶほど苦しみます

そしてついに発狂し、何十年も精神が逸脱したような自我を失う状態になってしまいます

戦争の後遺症、傷を表す心が痛む場面でした

晩年の主人公がとにかく学歴第一だ!と言うシーン

当時はホワイトカラーの仕事につくには資格や学歴、伝手が必要でした

(因みにお金を扱わない荷物運び、人力車などの仕事は人柄採用っぽかったです)

学歴や資格が必要なのは今もそうですが、当時のホワイトカラーに人柄採用は無いです

それは当時の社会の状態が犯罪が今よりも横行し、法律が機能していないために不法者かどうかが面接だけでは見抜けないことが原因なんじゃ無いかなと思います

SNSも無いですし、車も無いので運転免許証らしきシーンも無いし、そもそもカメラも貧乏な人は持っておらず、悪者じゃなくちゃんとしてる人だよと言うことを立証する為にあるのは印鑑くらいです

なので貧乏な根無草な人が何者かを示す手段は資格の合格証、大学の卒業証書などに押された印鑑のハンコか、友達の手紙くらいなんじゃ無いかと思います

そしてちゃんとしてない人(犯罪者など)を入らせないように印鑑のある書類や友達の手紙(コネ)が重要視されてきたのだろうと思うと納得がいきます

主人公はバナナ農家から、働きながら勉強し、公務員試験を受け学歴を誤魔化して公務員になります

そして子どもには、学歴が何より重要だと言い聞かせ、勉強させます

勉強しろと煩い親だなと思いますが、パソコンもスマホもSNSも無い時代の苦労を知っているからこそ言っているんだなぁと思うと時代を感じます笑

最近日本でハンコを廃止する動きが出ましたが、高齢者からすればまさに時代が変わったんだなぁという出来事なのでしょう、、、

なんと言うか勉強することで世界が広がると当たり前に言われていることが、映像で実感できる映画でした

終わりに 台湾はバナナパラダイスなのか

結局バナナパラダイスと言うタイトルどおりには行かない映画でしたが、楽園の中の人生を見れた濃い映画でした

台湾の映画は脚本に遊び心があると言うか、少し斜め上を行くシーンがあってオススメです

生きている汚さと生きている美しさが同居する、生命力のある映画が多いです

バナナパラダイスはまさにそんな映画でした

因みに主人公の俳優は今は監督として作品を撮っているそうです

いずれ観てみようと思います