アニメ産業レポート2018とは?
アニメ産業レポート2018とは一般社団法人日本動画協会が作ったアニメ業界に関する報告書のことです
今回はアニメ産業レポート2018サマリー版に書かれているトピックをいくつか抜粋してシェアしたいと思います
日本のアニメ産業市場初の2兆円突破
まず、アニメ業界にはアニメの”産業市場”とアニメの”業界市場”があります
何が違うかというと
⑴アニメ産業市場 → ユーザーが支払った金額を推定した広義のアニメ市場
⑵アニメ業界市場 → 全ての商業アニメ制作企業の売上を推定した狭義のアニメ市場
で、キャラクター版権などは⑴に含まれていないため、⑴と⑵ではだいぶ差が出ます
2017年は
⑴アニメ産業市場 → 2兆1,527億円
⑵アニメ業界市場 → 2,412億円
でした
どちらも2009年あたりから右肩上がりです
ただ、この⑴と⑵のギャップを見ると日本のアニメ制作会社の安月給が理解できそうな気がします笑
⑴のアニメ産業市場のジャンル別の内訳は
①TV:テレビ局アニメ番組売上
②映画:劇場アニメエンドユーザー売上(劇場アニメの興行収入)
③ビデオ:アニメビデオグラムエンドユーザー売上
④配信:アニメ映像配信エンドユーザー売上
⑤商品化:アニメ関連商品エンドユーザー売上
⑥音楽:アニメ音楽商品エンドユーザー売上
⑦海外:海外アニメ関連エンドユーザー売上(上映・放送・ビデオ・MDなど)
⑧遊興:アニメ作品を使用したパチンコ・パチスロ台の出荷高の推計値
⑨ライブエンタテイメント売上の合算
となっていてパチスロなど、アニメ制作から
ユーザーに届くのとは関係の無い市場の売り上げも含まれています
昨年度比で伸びたジャンルはテレビ(100.9%)と配信(113%)
昨年度比で伸びたのはテレビ(100.9%)、配信(113%)でTVがまだ伸びているのが意外でした
配信の勢いはAmazon prime video、Netflix、AbemaTVなど動画プラットフォームの影響です
(2017年の国内アニメ配信市場は前年比約13%増の540億円)
2002年には2億円だった市場が15年間で劇場市場406億円を超え、
ビデオパッケージ市場765億円の約7割にまで迫っています
一番市場を占めるジャンルは海外
上記の中で一番市場を占めるジャンルは
④の海外で海外売上の多くを占めるのは予測される配信やスマホゲームのアニメ化などです
アメリカが一番ですが、韓国、台湾、中国などアジアを合わせるとアメリカより売り上げ規模が大きくなる感じです
中国はチャイナリスクといって政府が海外アニメなどに口出しすることがあり
政府の言ったことでもしかしたら海外アニメが規制されるかもというリスクもありますが、中国市場は堅調に伸びています
印象に残ったのは
海外は海賊版サイトが多くアニメはマネタイズが難しかったが
サブスクリプション動画配信プラットフォーム等でマネタイズが可能になり、お金を回収できるようになったというところです
ただ、それらの配信プラットフォームは外資なため、日本のアニメ業界(実際に製作・制作に携わっている業界)に
お金は還元されているとは言えない状態です
こないだNetflixがアニメ制作会社と提携というニュースがありましたが
外資のプラットフォーマーが自社で自腹でアニメコンテンツを作り、独自性を出していくということが起きそうです
日本のアニメ制作会社は金がないのでむしろ制作に集中できありがたいんじゃないかと思います
ちなみにTVのアニメ制作分数は5年連続で横ばいでした
テレビの市場は昨年度比100.9%となっていますが、
Amazon prime video、Netflixなどに押されて下がっていく可能性は高いです
アニメビデオパッケージ売上が絶望的に右肩下がり
アニメのDVD,ブルーレイが売れているかどうかというグラフでは
右肩下りで5年前の2013年は1,153億円
2017年は765億円とほとんど半減していて
もはやブルーレイのみでは価値がなく、特典など
ブルーレイ+aの抱き込みで売らないとビデオパッケージ市場は厳しいです
万策尽きた、、、
絵から写真、カセットテープからCDになっていくくらいの時代の変化だと思うので
しょうがないっちゃしょうがないですね
まとめ
まとめとして今回の重要な点は
①従来のTVアニメ無料放映 → 外資のサブスクリプション動画配信プラットフォームの市場増
②海外の市場の拡大
③ゲームとのメディアミックス
じゃないかなと思います
これまで、アニメ業界の一般的なビジネスモデルは
アニメ制作会社が製作委員会方式で
広告代理店、テレビ局、出版社などがスポンサーとなって出した制作費を使って
TVアニメを作って無料で放映し、DVDとブルーレイの売り上げで
収入を得るという流れでした
(キャラクター版権などは広告代理店が持ってしまっていて制作会社に還元されない)
なのでヒットしないと儲からないという仕組みでした
(TVアニメが無料って普通に考えたらちょっとおかしいですよね)
製作委員会方式をとったのはそういったギャンブルの資金を分けておき、リスクヘッジをするためであり、
また、制作会社にとってはTVで放映してもらえないとDVDが売れないので
半ばしょうがなしで資金調達の為に製作委員会方式を採用していたということになります
勿論予算を持っているヒエラルキーが上なのは広告代理店、テレビ局でした
なのでアニメ制作者は予算をろくに貰えず、その少ない予算でアニメーターに給料を払うことになりました
しかし外資の動画配信プラットフォームの台頭で
外資の動画配信プラットフォームがアニメ制作会社を囲って
アニメコンテンツを作り独自のプラットフォームで配信するという形態が出てきます
配信場所が変わっただけでこれまでと同じじゃんと思われるかもしれませんが
外資に飼われていると言えど、ビジネスモデルは変わっています
TVでは無料で放映していましたがインターネットは月額制です
ネットフリックスの例で言えば制作会社のメリットは
・ネットフリックスとじかに契約するため、
契約金を元手に作品をつくり、完成した作品の権利は制作会社側に残るということ→グッズ販売も可能
・TVと違いインターネットなので日本だけでなく24時間、全世界に向けて発信することが可能になったこと
・製作委員会方式の合議制ではなく、少人数の決断で進められる為、よりクリエイティブな成果が出せる
などより制作者が自由にお金の心配をすることもなく作れる環境があるようです
全体としては、もっと日本独自の配信プラットフォームが強くなったらいいなぁと思うんですが、、、
外資プラットフォームにお金が流れて日本のアニメーターが儲からないのは悲しいです
最近作画崩壊とか放送打ち切りとか増えててアニメ制作の闇が表面化しつつある気がします
製作委員会方式でアニメ制作のデジタル化への移行が外国より遅れているのもこれから問題になりそうなテーマ
世界はiphoneなのに日本だけガラパゴスケータイみたいな独自の進化を遂げている感じ
日本のアニメコンテンツ産業は
車産業くらいに日本が海外相手に太刀打ち出来る分野なんじゃないかと思っているので
クリエイターにとっていいアニメ制作環境になってほしいです