このテーマは理不尽なこと、トラウマの記憶がテーマだと思います
日常の中に潜む一方的な暴力をどう人間は対処したらいいのか、そしてどう忘れていけばいいのか?という問いを持った作品でした
誰しも多かれ少なかれ、辛い経験や過去はあると思います
主人公は子供の頃経験したトラウマが大人になっても残り続け、それらを隠し、深く感情を押し殺しながら生きてきた人間でした
しかし大人になった時、絶対に断ち切れない人間関係としてトラウマのような状況が再び目の前に現れます
過去にやったことを忘れられずに過去を美化し続け、
過去に対する理不尽に暴力として論理的に実行するということをして現実を正当化していきますが、それは結局正しい対処であり、心の回復になるのか?と考えさせられる作品でした
過去のトラウマと言うのは絶対に抜け出したと思っても、ハイエナのように追ってきます
不幸になるのは簡単ですが、不幸な状況から脱出するのは相当の決意と体力が入ります
追ってくる過去にどう立ち向かえばいいのだろうか
愛せればいいのか、忘れればいいのか、美化したらいいのか、笑い飛ばせばいいのか、秘密にするのか、他の全く違う事に熱中すればいいのか
悲しみやトラウマは結局のところブルースのように笑い飛ばしながら悲しみを忘れることが一番の処方箋なのかもしれません
個人的に一番いいのは他の何かに熱中する事だと思います
熱中する対象が宗教とか、占いになってくるとそれはそれで良くないんですが、、、笑
主人公が過去に執着され、執着してしまっていたのは仕事を淡々とやり、淡々と家庭を営んでいて趣味のような趣味が無かったからかもとふと思いました
あとは意識的でもあるが、無意識に人は人に害を与えると言う事です
それは大抵無意識に干渉しすぎる事、依存しすぎる事、人の事を考えていない事、などなどです
この小説ではそれぞれの登場人物が特定の人に片思いしすぎてしまっている状態があります
理不尽な時は自分の被害だけを考えても埒が明かないので相手の性質を見極めて分析しておくのも大事だと思います
そうすると自分の想像で相手の悪意を増幅させる事をせずにすみ、納得した形で記憶として消えます
何もわからない状態で記憶を置いておくとろくなことがありません
執着していると自覚することではじめて執着を手放せます
あとがきにもありましたが、光とはまさに太陽であり、平等に照らす神様なのだろうと思います
なんだか宗教じみた感想になりましたが
三浦しをんさんのダークサイドが見えたいい小説でした
因みに三浦しをんさんといえば舟を編むというアニメ化した作品が有名でまったりしたこの作品とはかけ離れた雰囲気の作品です
ギャップ、作品としての幅というー作家の凄みも見れた小説でした